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87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 16:58:30.45 ID:yGMN8B1w0

「どうしよう……」
「戻る?」
「そうだね。戻ろっか」
女の子の提案に賛成して今度は素直に手を引かれて歩きます。

来た道を逆に辿っていくだけですが、いつの間にか川沿いを離れていたので多少帰り道が心配になりました。
畑や田んぼや作業小屋はどこにでもあるようですけれど、肝心の人影はありません。
人がいないのは寂しくて私を不安にさせました。

私たちが仲良く村から離れただけなのに、何故かみんなに置いてけぼりにされたような気分になってしまいます。
「あ」
「あ……」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:03:33.19 ID:yGMN8B1w0

何かを見つけた女の子は、いきなり私の手を離して道端に駆け寄って行ってしまいました。
女の子が突然に興味を示したのはよくある路肩で咲く花でした。
きっとそこには私よりも気になるものがあったのでしょう。

女の子が発見したものは私の手を離すに値するほどの楽しいものに違いありません。
それは私がいてもいなくても変わらないということでしょうか?
通り過ぎる夏風が私の体温を下げていきます。

押さえないといけない感情がひっそりと辺りの様子を窺います。
みんなはいつもそうでした。
私が一緒にいても目新しいものを常に探して、事ある毎に私を置いてどこかに行ってしまいます。


90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:06:08.76 ID:yGMN8B1w0

みんな決まって私のことを置いて行きました。
私といても楽しくないから。
私がいると楽しくないから。

きっとみんなはそう感じていました。
女の子は振り返ることなく綺麗な花びらをつまんで遊んでいます。
ただ咲いているだけでこうして誰かが近寄ってくる。

クラスで人気の女の子も笑顔を咲かせるだけで誰かが近付いて行きました。
私もその子に近付きたくて髪の毛をうんと伸ばしたり笑顔の練習もしてみたけれど、それでもやっぱりダメでした。
私がどんなに輪の内側を望んだところで私の居場所は決まって外側です。


91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:08:30.82 ID:yGMN8B1w0

家でも学校でも私が立つべき位置は変わりません。

「お前が恥ずかしい」

味方だと勘違いしていたお兄ちゃんには外側が似合っていることを気付かされました。
見た夢を思い出して視界が滲みます。
女の子の後ろに歩み寄り、静かにしゃがみました。

家族だったハムスターもインコも絶える瞬間まで私を見てくれていました。
優しく撫でると私に気付き、手をかけたときから離すまで。
その間の時間だけ私がその子たちの全てになれました。


92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:10:51.10 ID:yGMN8B1w0

女の子を後ろから優しく抱きしめて頭を撫でます。
お花から目を逸らしませんが、誰が何をしているかくらい理解しているはずです。
私は欲しいのは人気でもお花でも女の子でもありません。

ただ、誰かに私がいることを知ってほしい。
誰か見られている実感と安心感だけが欲しかったから。
私はまだ女の子の全てになれていません。

女の子が振り返るまでは、私はまだいないのです。
数回撫でてから両肩に両手を重ね、肩甲骨から首まで這わせて輪を作ります。
そこでようやく女の子があごを上げて私を仰ぎ見てくれました。
その瞬間に私は女の子の全てになれました。


93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:14:32.28 ID:yGMN8B1w0

「てんてん」
「ひゃっ?!」
びっくりして本日二度目の素っ頓狂な声を上げて尻もちをつきました。

手を絞める寸前で鼻先に天道虫の付いた花を近づけてきました。
「あれ? 黒てんてん嫌い? 赤がよかった?」
我に返ることができて、慌てて涙の溜まった目を麦わら帽子で隠しました。

何をしようとしていたかを悟られたくなくて帽子の下で涙を拭いて無理矢理笑顔を作って見せます。
「天道虫は嫌いじゃないよ。ただ驚いただけ」


94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:17:12.72 ID:yGMN8B1w0

「しましまがいいの?」
「し、しましま?」
縞模様なんて突飛な配色の天道虫は聞いたことがありません。

「パンツ」
慌てて立ち上がりお尻についた小石と砂を払います。
「ピンク白縞々」

「お家の人が心配してるから急いで帰ろうね」
「うん。手痛い」
たぶん私は女の子に助けられました。
一線を踏み越えそうになった足は、女の子に驚かされて尻もちを付いたおかげで越えることはありませんでした。


95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:20:11.09 ID:yGMN8B1w0

悪いことをしようとした報いは少し痛くてかなり恥ずかしかったですが、とても効果のある苦いお薬でした。
それからは変な気の迷いも起こらずに無事に女の子を送り届けることができました。
「私もお姉ちゃんの真似っこする」
「真似?」

「可愛いから髪の毛伸ばして麦わら被る」
そのときたぶんひどい顔になっていたと思います。
喜びたいのに恥ずかしい不思議な胸の高鳴りがよく分からなくて思わず涙が零れました。

泣いている顔が見られたくなくてお別れの挨拶を忘れたまま走ってお家に帰りました。
女の子に見られていないと思っていたのに、女の子の中に私がちゃんといたようでした。
ただそれだけのことが嬉しくてこっそりお家で泣きました。


96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:22:14.51 ID:yGMN8B1w0

11 縁側

「お腹いっぱい」
「そうだな」
縁側で胡坐をかくお兄ちゃんの隣に並んで腰をかけて、夜風を浴びながらお空を眺めます。

勇気を出してお兄ちゃんの手の甲を握ると、手のひらをひっくり返して握り返してくれた。
「きょうへんなことあった」
「変なこと?」

「へんなこと」
『変な事あった』と『変な子と会った』を掛けてみました。
どちらの意味で受け取ろうかと悩むお兄ちゃんの困った顔が見れて、私は少しだけ賢くなった気がしました。
「どんなことあったの?」


97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:24:47.59 ID:yGMN8B1w0

「うう……」
同じ返し方をするとはさすがはお兄ちゃんでした。
「川まで行ってきました」
ちょっと悔しくて唇を尖らせます。

お昼に見てきた景色、したこと、出会った女の子のことを一通り話します。
お兄ちゃんは私が話している間、興味深そうに相槌をうちながら聞いてくれました。
「それでね。女の子殺そうとしたんだ」

相槌はありませんでしたが、何も言ってこないので話を続けます。
「女の子が道路の脇に咲いたお花を見に行ったとき私の手を離してね。とっても寂しくなったの」
足元をすっと冷たい風が通り抜けました。


98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:27:08.70 ID:yGMN8B1w0

今夜は雨になるかもしれない。
「そしたら昔のこととかが頭の中に出てきて、もっと淋しくなって」
お兄ちゃんが手をぎゅっと握ってきたので、反射的に握り返します。

私はすごく冷たくなってるから、お兄ちゃんの手で暖めてもらう必要があります。
「女の子に見られたい一心で首にてをかけたの」
お兄ちゃんは私から視線を動かさずちゃんと見てくれていました。私だけを。

「だけどその子が天道虫を顔に近付けてきたせいで驚いて失敗しちゃった」
おどける様に笑いながらべろを出してお兄ちゃんを見ると、額に額をくっつけてきた。
急に顔が近くに来たのでとても驚きました。
もし私に尻尾があったらピンと逆立っていたと思います。


102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 17:55:26.18 ID:jYkev+2o0

読んでるよ


103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:00:23.23 ID:yGMN8B1w0

さるつらすぎ



「そっか。我慢できたんだ」
「う、うん」
「よかった」

緊張して頭の中が空っぽになりました。
真っ白になって話すことが見つからず、口から出てくるのはあーとかうーとかの呻き声だけです。
顔は真っ赤ですがまっさらになった頭にちょっとした疑問が浮かんできました。
「あのね!」

「どうした?」
突然の大声にお兄ちゃんが頭を離そうとしたので、逃がすまいと押し付けます。
「このままがいいからじっとして」


104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:03:00.54 ID:yGMN8B1w0

「わ、わかった……」
初めて出た気迫にたじろいだお兄ちゃんですが、言う通りにしてくれました。
たぶんこんな上下関係は二度とないでしょう。

「もしだよ」
「うん」
「もし私が誰かを殺したとしたら。お兄ちゃんはどうする?」
「埋める」

「うめ……え?」
簡潔すぎる答えに私が混乱してしまいました。
「埋められちゃうの?」


105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:05:29.00 ID:yGMN8B1w0

「お前は埋めないよ。お前が殺めてしまった誰かを埋める」
ようするにお兄ちゃんの返事は今まで通りを貫く、ということです。
「もしその誰かが俺になったら妹は殺せるか?」

「……たぶん躊躇う」
「やっぱ躊躇うか」
躊躇うだけで結末は同じです。

私は訊ね返しませんが、お兄ちゃんなら抵抗しないでしょう。
誰にも迷惑をかけず、犠牲になるのは可哀相な未成年の兄妹だけ。
一番簡単で一番綺麗な最期。
でも……


106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:08:02.88 ID:yGMN8B1w0

「そんなのしたくない」
お兄ちゃんは何も言わずにぎゅっと抱きしめてくれました。
不安な気持ちになると、すぐにお兄ちゃんは抱擁してくれます。
ひんやりとした心に暖かさが染み渡りますがいつまでもこの繰り返しをしていると私が前に進めなくなります。
お兄ちゃんのことが好きだからこそ、そろそろ手を離して歩き始めないといけないとと思いました。


107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:11:07.23 ID:yGMN8B1w0

12 晩餐

妹が殺めてきたのは動物だけだったけれど、最後のSOS信号を発したときだけは違った。

学校から帰ると珍しく妹が机に向かって勉強していた。
どこで覚えてきたのか流行のアイドルの曲を口ずさみながら問題を解く妹の後ろ姿は、インコを殺したときとはまるで別人だった。
纏っていた雰囲気に著しい差を感じたのが今とそのときの妹だけれど、そもそも妹は家でこんなにも楽しそうにしたことなんて一度もなかった。
確かに俺もこの家が楽しいとは思っていない、妹が抱えている居辛さと息苦しさはその比じゃない。

こうべを垂れて落ち込みながら机に向かっている方がとても自然だけに、ノートにシャーペンを走らせる楽しげな妹に対してとてもつない違和感があった。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
ドアを閉める音で兄の帰宅を察した妹はとびっきりの笑顔で出迎えた。
屈託のない笑い顔だからこそ気味が悪い。


108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:13:31.78 ID:yGMN8B1w0

俺の知っている妹は音にも会話にも怯えて縮こまるとても弱い生き物だ。
自分の知らない妹が同じ部屋にいることで言葉だけでは表現しにくい不安定な気分になる。
最近になって分からないところを怯えながらも訊きにくるようになり、少しだけ勉強に臨む姿勢が前向きになったと感じていたが、
さすがに昨日の今日でモチベーションが上がりすぎている気がした。

親の特例が出た様子も一切ないから、何が妹をそこまで立ち直らせたか甚だ疑問だが、考えるだけ妹が未知の生物に見えてきてしまうので、
勉強机に問題集とノートを広げて頭を切り替えた。
何週もして見慣れてしまった問題に欠伸が出そうになる。

まともな気分転換にもならないので、水分補給をしたくて椅子から立ち上がると、
「おにいちゃん」
「な、なんだよ」


109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:15:13.27 ID:3ubz4nw1O

しえんぬ


111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:15:54.93 ID:yGMN8B1w0

いつの間に背後にいたのか、にこにことしている不気味な妹が立って待っていた。
重なった紙の束を差し出されて受け取る。
「すごいよね? 頑張ったよね?」
それは中間テストで返却されてきた答案用紙だった。

なるほど。こういうことか。
問題に躓くたびに俺を頼っていたのはテストが近かったからか。
惜しくも90点にまで届いていたものはなかったけれど、赤ペンで書かれた数字は普通の家庭なら手放しで喜べるものだった。

「お父さん褒めてくれるかな?」
自分でも点数に満足しているのか、実った努力を称えられることに期待を寄せていた。
「ね? 褒めてもらえるよね?」


112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:18:18.43 ID:yGMN8B1w0

「そう……かもな。よく頑張ったと思うよ」
俺の言葉を信じ切り、笑顔の明るみが一段増した妹に罪悪感を感じて拳を握りしめる。
褒められるわけがない。

採点ミスのまま持って帰ってきた90前半のテストで俺が罵倒されたくらいだ。
どこまでも貪欲な父親の激昂に泣きじゃくる妹の姿が目に浮かぶ。
本当は俺がここで正直に「それはない」と現実を教えてやるべきだった。

でも、それはできなかった。
だってこんなにも何かに喜ぶ妹を見たのはハムスターを飼ってもらったとき以来だったから。
だから、誰にも褒めてもらえないか代わりに俺が妹を抱き寄せて頭を撫でてやった。
「すごい頑張ったな」


113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:20:46.93 ID:yGMN8B1w0

「ありがとうお兄ちゃん!」
一瞬でも妹に希望の光を見せてしまったことをそのときに強く後悔した。
胸の内で笑顔を絶やさなかった妹は、その夜に布団の中で声を押し殺して泣いていた。


それから数日後のことだった。
夕飯が終わり、いつものように同じ部屋で勉強をしていると妹が父親に呼ばれた。
とても不機嫌そうな声に妹は部屋を出るからすでにびくびくと怯えきっていた。

死刑の執行を告げられた罪人のような暗い面持ちと重い足取りで部屋を出て行く妹に胸中で謝罪した。
あれから妹はまた誰とも会話をすることもなく、再び心の殻を閉ざすかのごとく自分だけの世界に浸るようになってしまっていた。
妹が臨んだ未来を俺が事前に挫かなかったからこそ招いた悲劇だった。


114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:23:18.26 ID:yGMN8B1w0

部屋に戻ってくる妹の慰め方を考えながら親から貰った報酬をポケットの中で弄んだ。
じゃらじゃらと硬貨がぶつかり合う音だけが昔からの安心材料になっていた。
妹の落ちぶれる様を見ながら親を満足させて対価を貰う社会の縮図。

学校で友人同士の会話から本来の親子を学んでからは、昔に辞めた学習塾同様にこの家に対して嫌気が差し始めていた。
リビングから響く両親の大声を聞いてしばらく妹は帰ってこないだろうと予想し、姿勢を直してシャープペンシルを持ち直したときだった。
母親の絶叫に並みならぬ異常を察し、思わず椅子を蹴飛ばしてリビングへと走る。

「あれ……あ……」
そこで目にしたのは馬乗りになって母親の腹部に包丁を突き立てた妹の姿だった。
その時の判断が間違っていたかもしれないが、俺はそのときに取った行動が悪だとは思っていない。
父親を探すと、すでに電話の子機を握ってどこかの番号を押している最中だった。


115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:27:22.25 ID:mqa2jnjD0

|ω・`)


117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 18:51:09.79 ID:jYkev+2o0

支援


122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 19:00:33.71 ID:yGMN8B1w0

書き切る気だけどさるが悪い


母親の上で呆然自失となっていた妹の腕を掴んで抱き上げ、父親の呼び声を無視して玄関を駆け抜けた。
幸か不幸かポケットには遠出できる分の「報酬」が詰まっている。
汚れてしまった服の上に俺の上着を着させて人目をごまかしながら夜道を全力で疾走し、出発間際の終電になんとか乗り込んだ。
人のいない車両の中で未だ自分の犯した過ちのショックで震える妹を抱き寄せて、これからの非現実的な生活に深く落胆した。

いつ終幕を迎えてもおかしくない逃走劇だけれど、それでも一時的にでも妹を救い出せただけましかもしれない。
短い時間でも妹が自分らしさを見つめ直せる時間があれば、きっと元気を取り戻せるかもしれない。
しばらく厄介になる予定の老夫婦に対しての言い訳を考えながら、窓の外で流れていく夜景にため息をつく。
でも、それが愚かな勘違いだったと気付いたのは、それからまた数日後のことだった。


123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 19:04:19.99 ID:yGMN8B1w0

13 雨

女の子を殺しかけたと打ち明けられた日から、妹が深夜に部屋を抜け出すということがなくなった。
それは本来とても喜ばしいことで妹にとってもいい傾向なのだと嬉しがるところだけれど、俺はそれに不安を感じていた。
何もないときでも俯いて拳を握って体の震えを堪えたり、時折上の空だったりもするのは衝動を無理に抑圧している反動だろう。

「お兄ちゃんぎゅー」
それよりも特に変わったのが妹が後ろから抱き着いてくるようになったことだ。
妹からは聞かされていないが、無茶を承知で衝動をこらえてるのは一目瞭然なので、俺も抱きしめるのをやめた。
今までは過ちを犯した妹を慰めるための手段として抱擁を行ってきた。

けれど、妹が発作のように噴き出る衝動と面と向かって戦うと決めたのならば、俺の抱擁は妹の決心を揺るがす悪手にしかならない。
頑張れとは言わずに優しく頭を撫でると嬉しそうに鳴いた。
「あらあら、朝から仲がいいのね」


124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/16(金) 19:06:47.07 ID:yGMN8B1w0

寝床から出てきた妹を俺の背中で見つけた祖母はにこやかに言った。
お盆から食卓におかずが移されて朝食が並んでいく。
深い器に盛られた南瓜の煮付けは、それを覆うように甘く味付けされた挽肉が掛かっていた。

妹が目を輝かせて見つめているが、それは俺の皿で妹のは隣のやつだ。
「お口の中でもさもさするんだもん……」
指摘されて視線を動かすと、あからさまにしょぼくれる。
南瓜のサイズはあまり変わらないから、おかずの良し悪しを挽肉の量で判断したのか。

皿を取り替えてやると嬉しかったのか背後から首元に回された腕の力が強まった。
「そうそう、ご飯食べ終わったらお爺さんがお話しすることがあるって呼んでいましたよ。畑のことかしらね?」
「……かもしれないな。継いでほしそうだったし」









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>>赤くなった妹が「気持ちよかった」と兄に言うお話 ~その③~【完結】
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